やまもと経営会計事務所の山本辰彦です。
今回も前回に引き続き決算報告書の読み方について解説していきます。
今回は、損益計算書について説明致します。
(1)損益計算書とは
会社の一定期間の儲けを表した計算書になります。損益計算書では、儲けを表すため、税金計算をする上で欠かせない計算書となります。ここでいう一定期間とは、会計期間開始から終了までの期間を言い、個人事業主では1月1日から12月31日までの期間を示します。損益計算書を分析する際は、その年の損益計算書だけでなく、その期(当期)から3年分の推移を比較して分析すると会社の成長や問題点などを分析することができます。
(2)損益計算書各論
①売上総利益(粗利益)
売上総利益とは、売上高から売上原価を差し引いた差額の事で一般的には粗利益と言われております。
粗利益の額で会社に残る利益が大きく左右されるといっても過言ではありません。
そのため、会社の業績を上げたい場合や経営改善をする場合は、まず売上総利益に着目して改善を行います。
具体的には、
・売上高を増額するか
・売上原価を抑えるか
の2種類しかありません。
売上高は、売上単価×客数により算定されるため、単価を上げるか客数を増加させる方法を検討する必要があります。客数を増やすために、売上単価を減らしてしまっても売上高は増えません。
売上原価についても、仕入単価×使用数量により算定されますので、仕入単価を見直すか使用する数量を減らす方法があります。仕入単価を下げてしまうと品質に問題が発生する場合もあります。売上原価を見直す場合は、使用数量が適格か(ミスして使用数量を無駄に消費していないか)を分析すると良いでしょう。
ここで重要なのは、売上高と売上原価のバランスです。先ほども申し上げましたが、客数を増やすために売上単価を下げて、仕入単価を変えずにいた場合、使用数量は増加しますので、薄利多売になってしまいます。
そこで、売上総利益率を用いて薄利多売になっていないか分析する必要があります。
売上総利益率=売上総利益÷売上高
毎年の損益計算書と比較して売上総利益率が減少している場合、売上高に対して売上原価が増額していることになりますので(例えば価格高騰により仕入単価が増額している等)、改善する必要があります。
売上総利益(率)を改善する場合は、付加価値のある商品(低コスト高単価商品)を販売し、業績改善をすると良いでしょう。ただし、付加価値のある商品は、通常の商品に自社のノウハウを組み込むなど、お客様から見て、一般の商品より魅力的なものにしなければ、売ることはできません。経営をする上で付加価値を生み出すことが一番難しいと考えます。
➁営業利益
営業利益とは、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた利益を言い、ここで赤字になる場合は営業損失と言います。営業利益(損失)は、会社の本来営業の収益力を表しているため、営業損失の場合、本来の収益力がないと判断されるため、金融機関から融資を受ける場合は敬遠される恐れがあります。
販売費及び一般管理費は、固定費と言われており、売上高があってもなくても発生する経費と考えて頂いてよいかと思います(厳密には違います)。この販売費及び一般管理費を下げることで本来の営業の収益力を増加させることができますので、無駄な支払いなどがあった場合は見直す必要があります。
営業利益の増加又は改善をする場合は、まず費用対効果(費用に対してどれだけ収益につながっているか)を考え、経費削減をすると良いかと考えます。
ここで営業利益に関する指標(営業利益率)について説明します。
営業利益率=営業利益÷売上高
営業利益率は、業種にもよりますが、10%以上あると望ましい数値です。逆に考えますと売上の10%を残すのはとても難しいことです。販売費及び一般管理費には、人件費等の高額な費用が含まれております。そのため、まずは人件費を見直し(給与を下げるのではなく、人材が適材適所に配置されており、その人材の能力が最大限に活かされているか)をすると良いでしょう。
③経常利益
経常利益とは、営業利益から営業外の収益や費用を差し引いた差額(利益又は損失)を言います。経常利益(損失)は、毎年常に発生する収益力を見る数値をなっておりますので営業利益の次に大事な指標となります。
営業外とは、本業以外の収益や費用を言い、金融利息や有価証券の配当、収益分配金などを示します。そのため、借入を行っている会社の場合、金融利息が大きい場合があり、営業利益を大きく減少させる要因となります。
経常利益を分析する資料として経常利益率があります。
経常利益率=経常利益÷売上高
一般的には5%以上あることが望ましいです。
③税引前当期純利益
税引前当期純利益とは、経常利益から臨時偶発的に発生した利益や損失を差し引いた差額(利益又は損失)を言います。
臨時偶発的とは、交通事故による損失やその保険金など、通常では発生しない費用や収益を言います。
なお、税金を計算する場合は、この数値(税引前当期純利益)を見て税額算定を行います。