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M&Aにおける企業価値評価(後編)

やまもと経営会計事務所の山本辰彦です。

今回は、前回に引き続きM&Aにおける企業価値評価の続きをご説明致します。

【時価純資産価格法+営業権法】

 時価純資産価格法+営業権法を開設する前に、それぞれの手法を分解して解説します。

①時価純資産価格法

 時価純資産価格法を算定するためには、直近の簿価純資産価格法の数値を参考に調整を行います。簿価純資産価格法とは、会社の帳簿価格そのものですから、ここから時価に調整していきます。

 現在、ほとんどの中小企業で採用されている会計処理は、税務会計です。この税務会計は、税金を計算するために用いられている会計であるため、将来発生するかもしれないリスクの計上(引当金の設定)や有価証券の評価替え等が計上されていません。そのため、企業の実態に近い企業会計基準(上場会社等が用いる会計原則で、企業の実態(引当金の設定や有価証券の評価替え等)を行う基準)に調整する必要があります。

 企業会計基準に修正した後は、企業会計基準でも時価評価されなかった資産や負債などの時価評価を行います。

 特に、土地、建物、保険積立金などは、企業会計基準上は取得原価主義が採用されているため、実際の時価とは乖離していることが多いです。そのため、土地、建物に関しては不動産鑑定士に評価してもらうか、路線価や固定資産税評価額を用いて時価評価を行います。保険積立金については、解約した場合の解約返戻金を時価として考えます。そのほか、前払費用や電話加入権等、換金価値の無い資産については、0円で評価替えを行うなどの調整が必要となります。

➁営業権法

 営業権法とは、過去3期分の税引前の当期純利益より調整を行います。まず、非経常的・臨時的項目を除外する必要があります。特に特別利益や特別損失などの臨時的・偶発的な利益や損失は本来の収益力を歪めてしまう恐れがあるため除外する必要があります。その他、営業外の収益や費用についても経常的に発生するもの以外は除外します。ここで算定された利益は正常利益を呼びます。この正常利益から実効税率を除外して算定された利益(3期分)を加重平均して、超過利益を算定します。この超過利益に営業権の持続年数(複利年金原価係数)を乗じて営業権を算定します。

 ここで持続年数が大きな影響を与えます。持続年数が長ければ長いほど企業価値が大きく算定されます。一般的には1年から3年と言われておりますが、業種や規模、地域などにより異なります。

③時価純資産価格法+営業権法

 上記のように計算された金額を加算します。加算した後に金額から役員退職金を差引き、実際の企業の価値が算定されます。

 

個人の手取りとしては、

時価純資産価格法+営業権法

-役員退職金に関する税金-株式益に対する税金-M&A手数料 となることが想定されます。

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